医療と社会
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特集:健康格差の社会経済的要因
高齢者における健康満足感の推移と社会階層
集団軌跡モデルを用いて
中田 知生
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2012 年 22 巻 1 号 p. 79-89

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抄録

本研究の目的は,高齢者における健康満足感減退の階層差を集団軌跡モデルによって分析することである。
近年,パネルデータに関する関心が高まってきており,データの公開や分析手法の開発が進んでいる。本研究では,有限混合モデルの一種で,また,母集団をいくつかのクラスに分けて分析することができる集団軌跡モデルにより健康満足度のパネルデータを用いてその軌跡の階層差を検証する。
本研究においては,老研―ミシガン大学全国高齢者パネル調査のウェーブI(1987)からウェーブIV(1996)までを用いた。従属変数には健康満足感のダミー変数,独立変数には年齢,時間固定共変量として教育と性別,そして,時間依存共変量として従業上の地位と婚姻上の地位を用いた。
潜在クラス成長分析を健康悪化プロセスの問題に適用した結果,以下の知見が現れた。1)BICを用いたモデルの当てはめの良さの検定からデータは2つに分割され,第1グループは2次関数,第2グループは1次関数という関数形を持つことがもっとも適合度が高い。2)時間固定共変量の投入から,主として,第1グループは女性や教育が高い個人が集まっており,第2グループは男性と教育歴が短い個人が集まっている。3)時間依存共変量である従業上の地位と婚姻上の地位はともに健康に対して正の効果を持つ。
これらから,社会階層間で「罹患率の圧縮」のような現象が起きていることが見て取れた。

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© 2012 公益財団法人 医療科学研究所
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