2012 年 22 巻 2 号 p. 157-170
農村地域における公的医療・公立病院のあり方を巡り,「公立病院改革ガイドライン」に沿った改革の是非について議論がなされていた最中,2011年3月11日に東日本大震災が発生した。本報告では,大震災からの復興・再建議論の文脈において,岩手県の医療供給の中核を担う県立病院を事例として取り上げ,「小都市―農村型」二次医療圏が直面する地域医療の供給が抱える政策的課題を整理した。その結果,以下の示唆を得た;
①農村地域の医療供給において,岩手県では公的セクター,特に県立病院・診療所の役割は非常に大きく,大震災からの復旧,復興にあたってその再建は不可欠である。
②岩手の「小都市―農村型」二次医療圏では大震災前から県立病院等は供給体制の縮小を余儀なくされており,再建後においてもその議論は避けられない可能性が高い。
③再建上,最優先にすべきことは県・県立病院等と地域住民(県民)や市町村との信頼関係の構築,病院・診療所間の緩やかな分担と連携,そして医療と保健・介護(福祉)との連携である。これらはすでに震災以前から重大な課題であり,大震災でよりその必要性が鮮明になったに過ぎない。
④これらの課題に取り組むことが,岩手の農村地域における県立病院等の経営の持続可能性を高めることにつながる可能性が,一部の実践事例から示唆されている。