医療と社会
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特集:ヘルスケアにおける連携(I)
ヘルスケア領域における企業主導型「連携」の構築
―マーケティングの視点から「連携」を考える―
目黒 昭一郎
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2013 年 22 巻 4 号 p. 297-308

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抄録

本論文では,ヘルスケア領域における「連携」構築へのひとつのアプローチとして,「企業主導型の『連携』の構築」に焦点を当てる。その理由は,第一に,ヘルスケアにおける効果的,効率的な「連携」構築によってもたらされる社会的価値の潜在的な大きさの観点から,企業としてヘルスケアにおける「連携」機能を中核とした新規事業の構築を検討すべきであると考えること,第二に,その一つの理由としてさまざまな産業において,企業は戦略的「連繋」の構築と,そのマネジメントに関する情報・知識やノウハウ・スキルの開発・蓄積を進めてきており,それらがヘルスケアにおける「連携」のマネジメントにきわめて有用な資産となること,の2点にある。
この論拠の一つとして,帝人の在宅酸素療法事業における「連携」の構築プロセスを事例としてとりあげる。それをベースに,「連携」構築の7段階のプロセスにわけ,「連携」に対する戦略的展開を明らかにする。これらの分析から「連携」の成功要因として,以下の4点を指摘した。すなわち,①ヘルスケア領域のプレーヤーが直面するさまざまな課題の解決には,「価値を提供する仕組みを構築する」という「連携」の「考え方(マインド・セット)」とその実現能力が重要であること。②「連携」の構築には参加者のコンセンサスではなく,イニシャティブをとる組織や個人が,その「連携」に託すビジョンが不可欠であること,③「連携」構築の過程において,マーケティングがもつ基本的な戦略的視点とともに,成功モデルの構築とその全国展開のための配置と調整,標準化と現地適応化の複合化戦略,あるいは知識や経験の移転といった,企業がそれまでに培ってきたマーケティングのノウハウやスキルが有効に働くこと,④企業として,社会的価値の創出にどのように関わるべきか,企業という組織の基本的な社会的使命に立ち戻って,その立ち位置と当事者意識が明確になっていること,である。

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© 2013 公益財団法人 医療科学研究所
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