医療と社会
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〈特集〉子どもをめぐる諸課題を考える―少子化問題を中心に―
少子化社会における虐待対応
松原 康雄
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2017 年 27 巻 1 号 p. 53-61

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抄録

少子化が進行するわが国において,子どもの数の減少が続いている。一方,厚生労働省が発表する児童虐待相談件数は,厚生労働省で統計がとられ始めて以降,増加の一途をたどっている。この要因には,虐待発生件数そのものの増加のみならず,定義の変更や発見通告システムの改善がある。発見された虐待に対する的確な対応がなされる必要がある。

子どもの虐待対応については,児童福祉法等の改正によって,2016年5月に大きな変革がなされた。従来の漸進的改正とは異なり急進的な転換が行われたといってよい。児童の主体的権利が確認されたことは理念的転換の象徴となっている。子育て支援については,2つの改正がなされた。1つは,母子保健法の改正であり,子育て世代包括支援センター(法律上の名称は母子健康包括支援センター)が法定化されて,妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援が提供される。いま1つは,児童福祉法第10条の2に,市町村が支援拠点を整備することが規定された。虐待対応では,子育て支援から虐待に対する公的介入や支援までの「切れ目の無い」支援の実現が重要である。そのうえで介入の強化も目指されるべきである。介入部分については,児童相談所の機能強化が図られた。課題としては,発生予防の役割を果たす子育て支援利用の利便性向上,発見では潜在的虐待の早期発見,介入では各機関施設の連携強化と専門職の増員と専門性の向上をあげることができる。

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