医療と社会
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〈特集〉治験・臨床研究―患者の医療アクセスの改善,被験者保護と臨床研究開発の推進―
患者申出療養制度への期待と課題
がん患者の立場から
天野 慎介
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2018 年 28 巻 1 号 p. 49-61

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抄録

「患者申出療養制度」は,混合診療に関する規制改革会議での議論を経て,一定のルールと患者自身の希望に基づき,保険診療と併せて受ける保険外診療の1つとして,2014(平成26)年3月に規制改革会議より提案された。そして,同年6月に閣議決定された政府の規制改革実施計画において,申請から原則6週間で国が判断するスキームとされるとともに,2015(平成27)年5月に成立した「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律」によって法定された。日本医師会や複数の患者団体などからは,混合診療の原則禁止を堅持することや,有効性と安全性が示されたものは薬事承認と保険適用を速やかに認めること,患者の費用負担や患者説明への配慮を求める要望があり,これらの要望も受けて,中央社会保険医療協議会において制度と運用が検討された結果,一定の安全性・有効性等が確認されたものを対象とし,その保険収載を目指した実施計画を作成して臨床試験を実施して評価する制度となった。患者申出療養は4件にとどまっており,「医師による計画書の作成等にかかる作業の負担が大きいことなどにより,申請以前の準備に長期間を要するのではないか」「患者の費用負担が重いのではないか」などの課題が指摘されている。

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