医療と社会
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私的病院の資金調達問題について
資金需要推計と新たな資金調達スキームの提案
河口 洋行
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2000 年 10 巻 3 号 p. 75-95

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抄録

日本の私的病院における設備投資資金の調達は業種的な特性からみても,現在検討されている医療保険制度改革への対応への必要性からみても,病院経営というよりは医療政策上の重要な問題である。
しかし,現状では私的病院における長期資金の調達は,専ら銀行借入という単一チャンネルに頼っており,他業種に比して資金調達手段の多様化が行われていない。また,使用年数30年以上の病院を全て建て替えるという仮定をおいて,公私病院の病院建替の資金需要を粗く推計したところ,99年までに最大で約2兆6千億円(年間設備投資の約2倍程度)の資金需要ギャップが存在しているという結果となった。このような資金需給ギャップの原因は,私的病院と金融機関の間の情報伝達が円滑に行われず,情報ギャップが大きいたあと考える。
この情報ギャップを解消し,わが国医療インフラに必要不可欠な私的病院への資金供給を円滑化するためには,私的病院側も情報開示を積極的に行うことを前提として,病院のたあの「格付機関」および「格付を取得した病院への保証を行う機関」を創設することが必要と考える。また,これらの信用補完制度(格付機関・保証機関)は民間が主体となって整備することを提案する。
私的病院の資金調達手段の多様化については, 行政側として他業種とのイコールフィッティングに注意を払うとともに,民間が主体となってさまざまな資金調達手段の開発を行うことが期待される。

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