医療と社会
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医療費格差と診療行為の標準化
腎不全レセプトデータを用いた比較分析
細谷 圭林 行成今野 広紀鴇田 忠彦
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2002 年 12 巻 2 号 p. 121-137

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抄録

本稿は,国民健康保険加入者の診療報酬明細書(レセプト)に基づく個票データを使用することにより,北海道・千葉・福岡の3道県における医療費の地域間格差および医療機関間格差の実態を要因分解的に明らかにする。レセプトデータを用いた分析に対して,しばしば指摘される重要な問題点は,レセプトに記載される疾病名と実際罹患している疾病との間に隔たりが存在するということである。本稿はこの点に鑑みて,レセプト記載疾病名と実際の疾病名との一致性を可能な限りみたすと考えられる腎不全患者のデータを使用して,地域間,医療機関間での医療費配分の実態を分析する。本稿での主要な結論は以下の通りである。(1)全データでの分析において,入院・外来を問わず地域間での医療費格差が確認された。特に北海道の高医療費特性と千葉の低医療費特性が明瞭に示された。また,福岡・外来で相対的に過剰とも思われる低医療費診療供給の存在が明らかになった。(2)レセプト上位医療機関に限定した分析でも,医療費格差の存在は顕著で,特に千葉では低医療費特性と同時に医療機関間の診療上の均一性を確認した。したがって,これらの間に何らかの因果関係が考えられよう。(3)慢性腎不全における透析患者の分析から,診療方法の標準化は医療費の平準化に有効性を発揮することが明らかになった。このことは,DRGs/PPSの有効性に関して1つの積極的根拠を与えるものである。

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