医療と社会
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医薬品産業における人事処遇施策の導入過程
松繁 寿和梅崎 修
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2003 年 12 巻 3 号 p. 85-97

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抄録

本稿では,医薬品産業の人事担当者に配られたアンケート調査の分析を行うことによって,現在日本企業では,どのような人事処遇制度が導入されており,そして新たにどのような制度の導入を検討中であるのかを明らかにする。特に,人事処遇制度の改革はどのような順序で行われているかを把握することと,制度変革を検討している企業の導入意図を探ることを目的とする。
分析から,まず年齢給から職能資格制度・職能給,さらに目標面接管理制度,そして最後に年俸制の導入という流れが確認された。人事処遇制度の導入にはある順序が存在し,現実にはそれぞれ異なる導入段階にある企業が入り混じって存在すると考えられる。また,新制度の導入が行われても,それによって旧制度が廃止されるとは限らず,多くの企業ではいくつかの制度が組み合わせて運用されることもわかった。
さらに,より詳細な統計分析から仕事の成果の測り方に関する問題の存在が目標面接管理制度のようなあらたな評価システムに目を向けさせていることがわかった。すなわち,従業員の仕事の「成果」を正確に測り,評価過程の公平性を従業員に納得してもらうことこそ,近年の制度改革の目的であると解釈される。
一方,職務給・仕事給は,このような人事制度改革の流れとは外れていることも観察された。これらの制度は,厳密な職務評価を行うことによって過剰となった管理部門従業員層を効率化しようとする目的をもって導入されている可能性があることが示された。

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