医療と社会
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熟練保健婦による精神分裂病患者に対する訪問ケアの臨床能力
萱間 真美
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1998 年 8 巻 3 号 p. 101-113

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抄録

精神分裂病患者に対して熟練保健婦が地域でどのような訪問ケアを提供しているかを具体的に記述することを目的とした記述的研究を行った。平均経験年数29年で,精神保健看護の領域から熟練者として推薦を受けた保健婦12名を対象に21名の精神分裂病患者に対する訪問ケアを想起したインタビューを行った。データは逐語録を作成してGrounded Theory Approachの継続的比較分析法を用いて分析を行った。分析の妥当性を確保するため対象のうち4名に対して郵送法にて質問紙による確認を行った。分析の結果,関係性を創る技術,日常生活のケア,地域で生活していく権利の擁護,医療を受けることへの関わり,家族への関わり,症状の管理,他職種・住民との共働という7カテゴリと35のサブカテゴリが抽出された。保健婦の技術の特徴は,未治療あるいは治療が中断している,他者との信頼関係がほとんど確立されていないケースとの間で関係性を創るための多様な技術が用いられていたこと,さらに転医など医療との関わりそのものに対して基盤を地域におくことによって継続的な援助が提供されていたことであった。保健婦はクライアントとして患者本人にとどまらず地域住民としての家族にも関わる立場にあり,患者本人の医療との関係に拘束されない多様な援助を提供していた。

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