医療と社会
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ドイツ型参照価格制度の個別医療用医薬品価格・処方量と研究開発インセンティブへの影響
鈴木 雅人中村 洋
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1998 年 8 巻 3 号 p. 17-38

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抄録

本論文では,ドイツ型参照価格制度を個別医療用医薬品の価格・処方量と研究開発インセンティブへの影響という観点から考察した。その制度導入が製薬企業間の価格競争を促進する効果は疑わしい。一つの理由は,設定された参照価格以上の医薬品の価格が低下する一方で,参照価格以下の医薬品の価格が上昇する可能性が考えられるためである。ドイツにおける参照価格制度の医薬品価格への影響をレベルごとに分析した結果,91年に対象となったレベルIIの医薬品グループの加重平均価格指数は制度導入後に上昇していることが分かった。また,一度設定された参照価格を適正に改定することは極めて困難であり,長期的な価格固定化に結びつく。したがって,たとえ参照価格制度の薬剤費低減効果があったとしても,その効果は一時的であり持続するのは難しい。
ドイツでは制度導入により参照価格以上の医薬品から以下の医薬品への処方シフト,あるいは制度対象医薬品の処方量減少を示す十分なデータは得られなかった。ただし,我が国では,参照価格制度移行による薬価差消滅が,薬価差獲得を目的とした薬剤の過剰使用を解消させることで医薬品の処方量を減少させると考えられる。
さらに,参照価格制度がその対象となる医薬品を研究開発する企業の収益を悪化させるとは限らない。したがって,改良型新薬が制度の対象になっても,その研究開発意欲が減退するとは必ずしも言えない。また,画期的新薬を制度の対象から外したとしても,改良型新薬に比べその研究開発を促進する効果は必ずしも期待できない。

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