医療と社会
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参入規制としての非分配制約規制とその効果について
青木 研
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1999 年 9 巻 1 号 p. 3-21

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抄録
「医療の非営利性」は日本の医療供給体制の根本を成す大原則である。ところが,近年の規制緩和に関する議論では,この原則に変更を迫る「企業による病院経営」が検討されている。本稿では,規制緩和の影響を分析するために,規制の有無で何が変化するのか,そして,規制は有効なのか,について検討した。
はじめに,規制緩和の前後で変化するのは,剰余金を分配できるかどうか,すなわち非分配制約の有無であることを確認した。資金調達の手段なども変化するが,本質的に変化するのは非分配制約である。
次に,規制緩和の議論に見受けられる混乱を整理する意味で,「法制度としての非営利」と「動機としての非営利」を区別することを提案した。規制緩和によって変化するのは,前者の「非営利」概念のみであり,規制緩和によって病院の動機まで変化するわけではない。
最後に,非分配制約は病院のモラル・ハザードを防げるのか,という点についてモデル分析を行った。その結果,1)非分配制約規制は,品質プレミアムを抑えることで,低い価格でモラル・ハザードを防止する効果を持つ。しかしながら最終的には,2)非分配制約規制は最大限うまく機能したとしても,規制がない場合とたかだか同程度の効果しかないことを示した。
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