2022 年 21 巻 p. 1-13
本稿は、刑事事件の諸段階において用いられる、情報収集を伴う技術的手段に組み込まれた自動データ処理機能について、その法的課題を論じるものである。検討手段として、日本の通信傍受法、ドイツの刑法及び刑事訴訟法において具体化された個別事例を用いる。具体的には、日本の通信傍受法における「特定電子計算機」、ドイツの刑法及び刑事訴訟法における「電子的足かせ」の自動データ処理機能を取り上げ、両者において自動データ処理がいかなる役割を果たしているのか、法的観点から検討した。結論として、自動データ処理機能が見せる二つの異なる機能(国家機関側の利便性向上機能と、被告人等を含む刑事事件の関係者の人権保障機能)がそれぞれ有する法的課題を明らかにしたうえで、そのものは中立的な意味しかもたない技術的手段の法的評価の枠組みを構造化する。