抄録
1才5カ月の男児で, ガレン大静脈部に両側後大脳動脈を流入血管とする動脈瘤様膨大を示す1例を報告する. 本疾患は一般にガレン大静脈動脈瘤(aneurysm)と呼ばれているが, 血管写上も手術時の肉眼所見からもウイルス輪周辺に生ずる動脈瘤とは著しく性質を異にする. 両者を区別するために我々は本疾患に対し動脈嚢(arterial sac)という呼称を使用した.
本疾患の症状発現には嚢の中脳水道への直接圧迫よりむしろ嚢への血流のstealが重要な役割を果しているように思える. 従つて直接手術は水頭症に対してよりstealを閉じることを主目的とし, なるべく早期に行うべきである.