抄録
昭和47年1月以降約10年間に経験した肝門部胆管癌を含む上部胆管癌15例中, 切除できたのはわずか3例20%にすぎなかつた. 今回この切除3例に臨床的検討を加えて報告する.
症例1腫瘍は左右肝管合流部から右肝管に及び, 右門脈枝へ浸潤を認め, 右門脈枝と共に腫瘍を切除, 肝側の右門脈枝右胆管枝は結紮閉鎖し, 左肝管空腸吻合とした. 術後21日十二指腸潰瘍からの大量出血にて死亡した.
症例2腫瘍は左右肝管合流部から左右肝管に及び, 門脈本幹への浸潤を認めたため, この部を一部残して腫瘍を切除, 肝門部空腸吻合を施行, 術後10ヵ月目に腰椎転移を認め, 12ヵ月後癌死した.
症例3腫瘍は左右肝管合流部から右肝管に及び, 門脈への浸潤がなく胆管切除に肝右葉切除を併施し, 術後7ヵ月, 健在である.
以上, 肝葉切除を併施すれば, より広範囲の胆管の切除が可能となり, 肝門部胆管癌の切除率の向上が期待できるものと考えられた.