医療
Online ISSN : 1884-8729
Print ISSN : 0021-1699
ISSN-L : 0021-1699
経尿道的前立腺切除術中におこつた高度の低ナトリウム血症
小沢 隆昭宮崎 久義外山 あつ子江崎 公明垣内 康之
著者情報
ジャーナル フリー

1989 年 43 巻 2 号 p. 235-239

詳細
抄録

経尿道的前立腺切除術(TUR)中に損傷された前立腺静脈洞からの灌流液吸収によると思われる重症の低ナトリウム血症を経験した. 患者は89才の男性で脊麻下にTURを開始した. 手術開始後1時間ころより血圧下降, 意識レベルの低下がみられた. 瞼結膜は蒼白で, この時点でのヘモグラムはHb 5.6g/dl, RBC 184×104, Ht 17.4%であり, 血清ナトリウム値は109mEq/lであつた. 聴診上胸部全肺野にラ音を聞きPaO2 57.4mmHg, PaCO2 39.6mmHg, pH7.270 BE-8.2であつた.
ただちに酸素吸入, 昇圧薬, 高張ナトリウム液を静脈注射し, 出血に対する輸血を開始した. 血圧は回復したが胸部ラ音は次第に強くなり, 胸部X線写真で肺水腫像を呈した. 計測された血清ナトリウム値の最低値は93mEq/lであつた.
病棟帰室後も酸素吸入, 血圧, 腎血流維持のためのドパミン持続注入, 利尿薬, ナトリウムの負荷, 輸血を継続した. 術後1日目には各種検査値は正常化し, 2日目には胸部X線写真も術前の状態まで回復した.
TUR中の低ナトリウム血症は, その発生の予防とともに早期発見が大切である.

著者関連情報
© 一般社団法人国立医療学会
前の記事 次の記事
feedback
Top