医療
Online ISSN : 1884-8729
Print ISSN : 0021-1699
ISSN-L : 0021-1699
重症筋無力症と胸腺異常
松尾 秀徳
著者情報
ジャーナル フリー

2002 年 56 巻 3 号 p. 131-136

詳細
抄録
重症筋無力症(MG)は免疫性神経疾患のなかではもっとも病態の解明が進んでいる疾患であるが, 胸腺異常が疾患の発生機序にどのように関わっているのかは未解決のままである. MGの治療として胸腺摘出術が奏効することはよく知られているが, その理論的背景は不明確であり, とくに非胸腺腫例では何らかの理論的根拠が示されることが望ましい. MGでは胸腺myoid cell上のアセチルコリン受容体(AChR)が自己免疫反応の引き金になると考えられてきたが, その後の研究ではこの仮説を支持する結果は少なく, 代わって胸腺上皮細胞の役割が注目されてきている. MGの胸腺には, 病因に関わるすべての要素(抗原, 抗原提示細胞, 抗原特異的T細胞, 抗体産生細胞など)が存在することがわかっており, 胸腺摘出術の有効性を裏付ける一つの根拠となっている. MGの胸腺異常はとりもなおさずMGの発症機序と深く関わる問題であり, この難解なパズルを完成させることにより他の自己免疫疾患の理解も深まるものと考えられる.
著者関連情報
© 一般社団法人国立医療学会
次の記事
feedback
Top