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多発性硬化症におけるインターフェロンベータ療法の効果発現機序
佐藤 準一山村 隆
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2003 年 57 巻 7 号 p. 441-455

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抄録

近年インターフェロンベータ(interferon-beta; IFN β)が多発性硬化症(multiple sclerosis; MS)で再発抑制に有効であることが立証されたが, また同時にIFN β高応答群(responder)・低応答群(nonresponder)の存在が明らかになった. 現在までMSにおけるIFN β治療効果の分子細胞生物学的機序は十分解明されていない. IFN βは第一にIFN γによるクラスII主要適合性抗原発現誘導に拮抗して抗原提示能を抑制し, 第二に抗原提示細胞によるIL-12産生を抑制してTh1シフトを是正し, 第三に活性化. 自己反応性T細胞の血液脳関門通過を阻止することにより, 強力な抗炎症作用を呈することが報告されている. 最近われわれは遺伝子アレイを用いてMSにおけるIFN β治療効果発現に重要な役割を果たすと推測されるIFN応答遺伝子群(IFN-responsive genes; IRG)を同定した. IRGにはIFN β産生における正の制御転写因子IRF-7や抗原呈示機構の主要構成要素IFI30, TAP1が含まれている. われわれの研究結果はIRGがMSにおけるIFN β responder, nonresponderを識別するマーカーとなる可能性を示唆する.

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