抄録
わが国のHIV感染者数とAIDS患者数の動向について, エイズ発生動向調査を基礎として概観した. 日本国籍者において, HIV感染者とAIDS患者ともに, 報告数は年次とともに直線的に急増し, 2004年末の累積数はそれぞれ4,673人と2,486人であった. 外国国籍において, それぞれの報告数は近年ではほぼ横ばいであり, 2004年末の累積数は1,887人と791人であった. 日本国籍者においてHIV感染の流行は全国的に拡大しつつあり, 感染経路では同性間性的接触, 年齢では20-39歳で増加が顕著であった. 1997年以降のAIDS患者報告数から, 抗HIV治療の進展・普及によって, 発見・診断されたHIV感染者におけるAIDS発病の減少が示唆された. 未発見・未診断を含むHIV感染者数は報告数の約4.2倍と試算された. 今後, HIV感染報告の捕捉率を考慮しつつ, HIV/AIDS報告数の動向観察をより精密に実施することが重要であろう.