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筋ジストロフィーの摂食・嚥下障害
―Duchenne型筋ジストロフィーと筋強直性ジストロフィー―
野崎 園子
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2007 年 61 巻 6 号 p. 381-388

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抄録

筋ジストロフィーの摂食・嚥下障害は疾患によって病態が異なる. ここでは, 小児と成人においてそれぞれ最も有病率が高いDuchenne型筋ジストロフィー(DMD)と筋強直性ジストロフィー(MD)の摂食・嚥下障害の現時点における知見について述べる.
DMDでは, 10歳代より咬合障害や巨舌などによる準備期・口腔期の異常が出現し, さらに20歳頃より咽頭残留などの咽頭期障害が出現する. 口腔・咽頭の通過障害は固形物の方が強く, 咽頭残留は液体の方が多い. 対策として, 咬合訓練による咬合力の改善や口腔周囲筋のストレッチによる可動域の拡大, 食道入口開大不全に対するバルン法の有効性について報告がある. 摂食による疲労を考慮した食事介助やポジショニング対策も重要である.
MDでは, 誤嚥が予後に影響を及ぼしていると考えられる. 摂食行動異常などの認知期障害・不正咬合などの準備期障害・鼻咽腔閉鎖不全などの口腔期障害・咽頭残留や誤嚥などの咽頭期障害・食道拡張などの食道期障害など, すべてのプロセスにおいて障害されるが, 病識が乏しい場合が多い. 液体の嚥下障害の方が重症である. 自覚のない誤嚥が多く, また, 食事中の窒息のリスクが高いため, 十分な観察が必要である.
呼吸筋力低下による呼吸不全は嚥下状態を悪化させる. 呼吸不全初期には, 呼吸管理は夜間のみで日中は呼吸器を装着しないことが多いが, DMDにおいては, 食事中の経皮的酸素飽和度が低下する場合は, 呼吸器を食前または食事中に装着することが望ましい. MDでは気管切開後の嚥下状態の変化にも注意する.

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