2008 年 62 巻 12 号 p. 668-673
患者の生理機能を超える過大な手術侵襲が加わると,生体内のホメオスタシスが破綻し, さまざまな術後合併症が発生してくる. 人口の高齢化により, 内科慢性疾患を持つ患者を手術する機会が増えているが, これらの患者の生理機能を術前に把握し, どの程度の手術を行えば大丈夫であるかを判断することはきわめて重要である. われわれはこの目的を達成するために, 患者の生理機能と手術侵襲を定量化することにより, 術後合併症の発生を予測するE-PASS scoring systemを開発した. その後行われた多くの研究により, E-PASSが信頼性の高いリスク評価法であることが示されている. 本稿では, E-PASSの有用性を最新の知見を基に解説する.