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重症心身障害児(者)病棟における感染症流行について
松田 俊二野田 雅博
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2008 年 62 巻 12 号 p. 679-683

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抄録

重症心身障害児(者)(以下, 重症者)の施設(以下, 重心施設)では感染症の流行が頻回にみられる. 重症者の死亡原因では肺炎・気管支炎(42.4%)などの呼吸器疾患が半数以上を占め, 呼吸器感染症の病棟内流行とも関連すると考えられる. 今回, 国立病院機構の重心施設を対象として, 平成19年に病棟内で流行した感染症の調査を行った. 愛媛病院の重心病棟4病棟(入院患者160名)について, 平成19年1年間に病棟内で流行した感染症を調べ, また, 平成19年11月15日から平成20年3月末までの冬季の呼吸器感染症発症者について4種類の検査キットを用いて病原体(インフルエンザ, アデノウイルス, RSウイルス, 咽頭A群β溶連菌)の検索を行った. さらに, 全国の国立病院機構重心施設に対して, 平成19年1年間の病棟内での感染症流行について回数・病原体・感染者数・持続期間のアンケート調査を行った.
愛媛病院の重心病棟4病棟での平成19年の1年間の感染症流行は7回であった. 春にノロウイルス感染が3病棟で3-4月に1回ずつ, 4月にインフルエンザ流行が1回, 7月から8月にかけてヘルパンギーナ流行が1回, 3月と8-9月に原因不明の発熱疾患の流行が2病棟で1回ずつみられた. 全国の国立病院機構の74重心施設を対象としたアンケート調査の結果は, 49施設125病棟での感染症流行回数は合計61回(0.49回/病棟/年)であった. ノロウイルス感染症およびインフルエンザの流行が多く, 各々16回, 12回であったが, 最も多いのは病原体不明の呼吸器感染症の25回の流行であった(0.2回/病棟/年).
愛媛病院で冬季に散発的に発生する感染症発症者の病原体検査の結果では, 1名で鼻腔拭い液からRSウイルスが検出されたが, インフルエンザウイルス抗原と咽頭アデノウイルス抗原は検出されなかった. 咽頭拭い液からのストレプトコッカス抗原は5名で検出され, 6名が擬陽性であった. 原因微生物の検出率は低かった.
病棟で流行する呼吸器感染症の原因微生物の同定は, 今後の院内感染防止対策の上で非常に重要と考えられる.

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