日本医真菌学会雑誌
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総説
わが国における爪白癬治療の現状と問題点
原田 和俊
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2022 年 63 巻 1 号 p. 1-6

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抄録

 爪白癬は白癬菌による表在性真菌感染症であり,皮膚科における重要なcommon diseaseの一つである.推計によれば人口の10%程度が罹患している可能性がある.高齢者は爪白癬の罹患率が高いため,高齢化が進行するわが国では,今後も患者数の増加が危惧される.爪白癬による爪甲の肥厚や粗造化により,患者のQOLが低下するため,積極的な治療介入が必要である.わが国では爪白癬治療薬として外用抗真菌薬(外用薬)が2種類,内服抗真菌薬(内服薬)が3種類投与可能である.さらに日本皮膚科学会からガイドラインが発表され,爪白癬の治療環境は整っているといってよい.しかし,誤診や不適切な治療,治療継続率の低さにより,爪白癬の治療成功率は必ずしも高くない.爪白癬の診断には直接鏡検が有用である.直接鏡検のスキルアップを行い,爪白癬の診断率を上昇させることが必要である.外用薬は安全で,高齢者にも投与しやすいが,治癒率はあまり高くない.外用薬で改善しない症例や,混濁面積が広い症例には積極的に内服薬を選択すべきである.患者に爪白癬治療を継続してもらうには,治療の必要性,治療期間をしっかり説明し,その後も経過観察を継続的に行うべきである.再診時,爪切りを施行すると患者の受診率が向上する.皮膚科医は爪白癬が感染症であることを再認識し,完全治癒を目指した治療を選択すべきである.

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