感熱記録紙とは含有する染料と顕色剤の熱反応により,任意の可視像形成が可能な機能紙であるが,光に対する耐性が低く,未発色部位の黄変着色や発色部位の退色が進行するという問題を抱えている.この問題点を解決するため,紫外線吸収能を付与した新規顕色剤である桂皮酸アミド誘導体を開発した.本化合物群を使用した感熱記録紙の耐光性試験を実施したところ,未発色部位のみならず発色部位の耐光性も付与することに成功した.一方,一連の誘導体を開発する過程において,同様の紫外線吸収能を有するにも関わらず,耐光性付与能力には誘導体による差が存在することが明らかとなった.感熱記録紙へ耐光性を付与出来なかった誘導体は光照射により劣化することを明らかにし,桂皮酸アミド誘導体を用いて耐光性を付与するには結晶状態で光劣化が進行しないことが重要であることを見出した.また結晶構造解析結果から,桂皮酸アミド誘導体の光劣化の原因は結晶中で進行した光二量化反応であることを特定した.