ペーパーレスオフィスはなぜ来ないのか？紙はどこで使われるのか？

抄録

本稿では「ペーパーレスオフィスはなぜ来ないのか？」「紙はどこで使われ続けるのか？」という2つ課題を検討する．前者について，オフィスのペーパーレス化が進まないのは，小規模な企業や組織を中心にして，承認や申請の業務フローの多くが紙で流れており，電子化されていないためである．業務フローの電子化には，基幹システムの導入や社員教育の初期投資が必要であり，うまく移行できなかった場合には業務の生産性がかえって低下してしまうリスクがある．したがって，ペーパーレス化の進展は今後もゆるやかに進行すると予想する．後者の問について，紙のよさは「扱いやすさ」にあり，紙の扱いやすさはモノとしての紙の物理特性によって支えられていることを述べる．そして，モノの物理特性を活用した紙の利用は電子メディアでの置き換えが難しく，こうした領域では今後も紙が使われ続けると予想する．