2019 年 58 巻 4 号 p. 424-433
世界中で多くの人々が臓器を待っている.移植に必要な重要臓器を作るために,生きた細胞から生きた臓器を工学的に作る組織工学の研究が始まり,1990年代に世界中に拡がった.幹細胞生物学の研究では,様々な細胞に分化するES細胞やiPS細胞をはじめとする幹細胞の研究が大きく進歩し,組織工学は,いよいよ臓器工学に向けてその重要性は高まっている.我々の研究室では,『機械で臓器を作れるか?』を目標に掲げて挑戦的な研究開発を進めてきた.印刷技術の応用と3次元積層造形を目指した点から,バイオプリンティング·バイオファブリケーションと呼ばれるようになったが,組織工学の課題を破る挑戦がその本質である.本稿では,インクジェット方式の3Dバイオプリンタの開発を通して,組織工学のブレークスルーへの挑戦について,そして臓器作製のためのプロセス工学的観点からの戦略的な取り組みを合わせて紹介する.