2020 年 59 巻 1 号 p. 51-55
キヤノンでは,小型化・ファーストプリント時間短縮・消費電力削減の面で大きな利点があるODF (On Demand Fuser) を開発し,多くの機種に採用している.このODF定着器において,定着フィルムの表層摩耗は製品寿命を決める重要な因子となっている.定着フィルムの表層摩耗は,荷重と滑り距離の積に比例する一般的な摩耗評価式では評価することができないため,評価工数が大きな通紙耐久評価により評価を実施しているのが現状である.また,定着器のニップ内では接触域内に滑り域と固着域が混在するマイクロスリップ現象が生じていると考えられる.
本検討では,定着フィルムの表層摩耗をマイクロスリップの滑り域に生じる摩耗であるとらえ,摩耗発生メカニズムを明らかにすると共に,FEM (Finite Element Method) を用いた摩耗予測技術について述べる.