1997 年 15 巻 1 号 p. 253-259
ベルの不等式の破れにより実在論が危機に立たされる現在、量子力学の観測における波束の収縮を、脳の外の意識によるとしたノイマンの観測理論の検定を目的として、異なる2つの状態の重ね合わせ状態にあるマクロ系に対して仮想観測を行い、仮想観測が成立した場合と成立しなかった場合の仮想観測者の聴覚誘発電位を比較した。その結果、頭頂(Pz)において弁別タスクに伴い出現するP300波形のピーク振幅に統計的に有意な差が認められた。意識が観測による波束の収縮に影響しないとする立場からは、この有意な差は説明が困難であるかもしれない。