2000 年 18 巻 1 号 p. 216-231
われわれは先の一連の研究で高次の精神活動における共鳴現象を具体的なメッセージに注目して定量的に解析する手法を確立した。その手法では数字や文字のようなデジタル情報が任意の人数の集団でどのような共鳴をどの程度引き起こすかが解析できる。方法の概略は、参加者を着席させて、定められた指示に従って任意に思い浮かぶ情報をカードに記入させ、隣接する者同士での一致の度合い(すなわち、共鳴の度合い)をスコアとして与えて、確率論的な道具で評価するものである。この試行をシンクロXと呼ぶ。ここでは、56人の参加者によって共鳴を意図して繰り返された試行(ポジティブ試行)のデータを解析し、座席の空間位置がスコアに影響を与えるかどうかを調べた。具体的には、配置の辺縁を形成する「辺縁群」と、配置の内部領域を形成する「内部群」でスコアに差が生ずるかどうかを検討した。2日間に2時間づつ間をおいて3回づつの試行を行いこれを1セッションとして合計6セッションの共鳴試行を行った(計18回)。内部群はさらに辺縁群に接する境界群と、残りの中心群に分けた。辺縁群のスコアはルールに従って補正される。解析の結果、境界群は中心群より平均スコアが有意に高く、辺縁群と内部群には平均スコアに差がないことが示された。以上からスコア補正の妥当さが分かり、補正を受けない内部群で境界群と中心群のスコアに差があることから、座席位置がスコアに影響を与える可能性が示唆された。