2005 年 23 巻 2 号 p. 306-313
筆者らは近赤外分光法による脳活動研究において、隠された図形を推測するときに(透視条件)、左右の側頭葉で時折、突発的な血流変化が起こることを見出した(Yoichi et al, 2002)。この突発的血流変化は、推測中に浮かぶ図形イメージの明瞭さ(印象度)と関係が深いと思われた。本研究では、この現象をさらに詳しく調べるため、健康な男女14名による実験を行った。1試行は3分間の推測と3分間の休憩とし、連続3試行で1ランとした。標的図形は5種1組の中から任意の1つを擬似乱数によって等確率に選び、覆いをしたディスプレイに表示した。被験者は3分間の推測後、心に浮かんだイメージを回答し、さらにそのイメージの印象度を3段階で答えた。計69試行の実験の結果、推測中に側頭葉で突発的血流変化が起こった場合(10試行)、強い印象度を回答する傾向があることが確認された(p<0.001、片側)。また、回答行動に伴って突発的血流変化の起こることも見出されたが、印象度との間に有意な関係は見られなかった。推測結果と標的との一致は10試行で、偶然の範囲内であった。しかし、推測中に突発的脳血流変化があった10試行では、有意ではなかったものの、推測結果と標的が一致することが多かったため(一致3回。p=0.06, 片側)、今後さらにデータを増やして調べる必要がある。