2006 年 24 巻 2 号 p. 379-382
とても悲しかったり嬉しかったりした出来事は良く覚えていて忘れにくい、という経験は身に覚えがあるだろう。一方、出来事自体は情動的でなくても、その出来事を経験したときと同じ感情状態のときに、その出来事が思い出されやすくなる現象が知られている。本研究では健常大学生を対象に、[^<15>O]H_2O positron emission tomography (PET)を用いて、この現象の背景となる脳内機構を検討した。その結果、ターゲット刺激の記銘-想起間の感情状態がネガティブで一致している場合に、不一致の場合よりも想起成績が良かった。また、この効果に関連して左海馬傍回前方部、右外側前頭前野、右外側後頭葉が活動した。これらの脳領域は、特定の感情状態と刺激の記憶とを結びつけることにより、記憶の促進効果に必須な役割を担っているものと考えられる。