国際生命情報科学会誌
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ミニ・シンポジウム 「森になる」における超越的な与える喜びの実践
「森になる」 : 気づきとしての自己超越
(「森になる」における超越的な与える喜びの実践,ミニ・シンポジウム,第33回生命情報科学シンポジウム)
河野 秀海
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2012 年 30 巻 1 号 p. 117-

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抄録

「森になる(心の森をのこす会)」とは、墓碑を建てる代わりに樹木を植え、自らが木となり森となって地球環境と子孫を護ろうと提唱する運動である。それは、環境破壊に対する具体的な方策を提示することが期待される運動でもある。と同時に、戦後失われた地縁、血縁に代わるコミュニティを創造し、つながりを取り戻す試みでもある。さらに、樹木葬という具体的な実践を通して、個人意識や宗教思想に新たな枠組みを付与しようとする精神運動とも言える。それは、二元対立を超えた新たな枠組みを模索する実践哲学とも成り得ると考える。つまり、近代西洋と東洋古来のあり方を統合する試みなのである。すなわちこの運動は、人類を頂点に自然を資源とみてコントロールしようとする在り方と、天地を崇め自然に服従する在り方を統合し、人間の営為そのものが環境と美しく調和してゆく契機となりうる。このように「森になる」運動は、自然との平和共存的実践にとどまらず、自己超越的気づきを促し、愛他的精神を鼓舞し、人生における高潔なあり方を促進すると期待される。

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