国際生命情報科学会誌
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ミニ・シンポジウム 「森になる」における超越的な与える喜びの実践
感謝体験の意識化がポジティブな感情と愛他的行動に与える効果
(Practices of Transcendental Joy of Giving in "MORININARU" (Afforested Burial)",Mini Symposium,The 33rd Symposium on Life information Science)
小野寺 哲夫
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2012 年 30 巻 1 号 p. 123-

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抄録

ポジティブ心理学のポジティブ感情と感謝研究の知見に基づき、感謝体験の意識化(喚起)を促す方法として感謝クエスチョンを考案し、その気分や感情状態、原因帰属に与える影響について検討した。被験者は326名の大学生で、質問紙法で実施された。最初に気分状態が測定され、「リストラされた父親が家族に暴力を振う」という短い物語1を読んだ後、1回目の帰属項目に回答した。その後、実験刺激として、感謝クエスチョンなどのいずれかがランダムに施行され、再び実験操作が加えられた物語2を読んだ後、2回目の帰属評価をし、最後に、再び気分状態が測定された。分析の結果、感謝クエスチョンには、ネガティブ感情を抑制し、ポジティブ感情(ポジティビティ)を増加させる効果があることが示された。マカロウやエモンズ(2001)らは、「感謝」には他人やそれ以外のものへの愛他的行動を促進させる機能があるとした。従って、感謝体験の喚起・意識化によって、ポジティブ感情としての感謝の念に満たされた人は、困っている他人のみならず、森や大地といった自然への愛他的行動、ひいては、樹木を植え、自らが木となり森となって地球環境を護る「森になる」精神運動を推進していく上での精神的基盤になるのではないかと考えられる。

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