本稿は、従来のポジティブ心理学における限界を指摘し、超越的視点から幸福に関する理論と実証研究を紹介し、「与える喜びの心理学」としてポジティブ心理学第二世代を提言するものである。ポジティブ心理学は、個人の強みを強調し、弱みは克服して行くべきだという暗黙の前提に立っているように見られる。ここでは、まず宗教的文脈における究極の幸福モデルとして、弱さの中にある強さ、コントロールしないで明け渡すという態度について概観する。次に、臨床心理学における退行理論と、我々の311のPTG(トラウマ後の成長)研究に基づき、ネガティブさが成長に貢献するメカニズムを記述する。その後、向社会的行動が個人の幸福感を増進するという実証データと、大学授業内で実施している向社会的行動促進プログラムを紹介する。以上をふまえて、人間本来の性質である「与える喜び」の心理学を、ポジティブ心理学第二世代として提唱する。