国際生命情報科学会誌
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研究要旨
与える喜びに支えられる持続可能な幸福 : 東日本大震災のPTG研究より(研究要旨,第38回生命情報科学シンポジウム)
尾崎 真奈美
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2014 年 32 巻 2 号 p. 247-248

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抄録

本研究の目的は、超越的な視点よりウエルビーイングをとらえ、ネガティブな事柄も内包する、インクルーシブポジティビティ理論を提唱することである。東日本大震災後の二つの研究結果をもとに、インクルーシブポジティビティ概念がいかに持続可能なウエルビーイングになりうるかを説明する。 第一の研究は、首都圏の学生対象とした心的外傷後の成長に関する調査である。調査結果より、悲観的態度で悲しみや不安を強く示した学生のほうがそうでない学生に比較して、PTGが高かった。この結果は、危機にあっては、悲観的態度がより適応的であること、また、痛みが精神的成長に貢献する可能性を示唆する。 第二の研究は、学生の向社会的行動に関する介入研究である。介入の結果、躊躇していた学生が、実際の行動による充実感と喜びを通じて成長し、見返りがなくても向社会的行動に自主的に参加するようになった。ポジティブ感情と人生満足度の促進が観察されたが特に、平安な気分の上昇が著しく、うきうきするようなポジティブ感情は有為に変化しなかった。 以上より、痛みや悲しみが個人の人格成長に貢献すること、また、自己犠牲的行為が与える喜びとして経験され、ポジティブ感情を促進し、従って持続可能なウエルビーイングを導くことが明らかになった。

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© 2014 国際生命情報科学会
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