〔背景〕抑うつ気分が、身体の状態および身体疾患と関連することは、精神神経免疫学によって確認されてきた。抑うつ気分をコントロールすることは、心身のwell-beingを保つことに有益であろう。〔方法〕今回は、抑うつ度とその緩衝因子である社会的サポートを高齢集団において評価した結果を例示する。日本老年学的評価研究データを用い、65歳以上の約26000名を対象に、抑うつ度(GDS得点)と社会的サポート(4側面で評価)の男女差を横断的に解析した。〔結果〕抑うつ度は、既婚者:男性<女性、死別後1年以内:男女差なし、死別後1年以上:男性>女性であった(ANCOVA、年齢・疾病などで調整)。ただし、既婚者の抑うつ度の男女差は、SES(socio-economic status、ここでは教育年数と所得)で調整すると消失した。一方、社会的サポートは、配偶者からのサポートの頻度は男>女性ではある一方、それ以外のサポートは男<女であった。また、社会的サポートは、与える方が受けるよりも抑うつ度が低くなる傾向があった。〔結論〕心身の健康に関連する抑うつの状態と社会的サポートの特徴を把握することは、well-beingのための社会的・個人的介入に向けた有効な戦略のヒントになるであろう。