国際生命情報科学会誌
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研究要旨
美しい景観はなぜ美しいのか?
環境心理学への進化論的・現象学的アプローチ
渡辺 恒夫
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ジャーナル オープンアクセス

2016 年 34 巻 1 号 p. 62

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抄録

良い景観とは何かという景観心理学の根本的な問いに対する,進化論的と現象学的という二つのアプローチの意義を明らかにしたい。第一に,景観研究がその一部に他ならない環境科学自体にとって,これらのアプローチは意義がある。なぜなら,環境とは幾何学的物理学的時空間ではなく主体としての私たちへ立ち現れる現象だからであり,また,この環境という現象は,生物としての私たち人類の進化過程ですでに価値を負荷されているからである。第二に,アップルトンの「眺望―隠れ場」理論やカプラン夫妻の「好みのマトリックス」を始めとする進化心理学的諸研究は,自然景観だけでなく都市景観の美学的研究としても,意義と生産性が認められている。第三に,特に歴史的都市景観に関して,志向性という概念を備える現象学は,進化的アプローチに対する相互補完的アプローチになりうる。二つのアプローチの関係性に関して,方法論的考察が最後になされた(なお本発表は、『情報コミュニケーション学研究No.16』に掲載予定の拙稿「景観心理学への進化論的・現象学的アプローチー環境心理学ノート」に基づいたものである)。

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