2014 年 90 巻 5 号 p. 171-182
ヒューマンエラーや違反といった不安全行動のメカニズムに関して報告する心理学の論文はこれまで数多く存在するものの,そのような行動の抑制を目的とした安全教育に着目した研究は少ない。本論文では,臼井(2008)が開発したエラー体験プログラムを用いた体験型の安全教育の有効性を検証することを目的とした。87人の消防士を対象に,「注意の偏り」あるいは「違反」をPCベースにて体験させる教育を実施した。その結果,日常のリスクテイキング行動については教育後において態度が安全側に変容し(研究1),違反とリスクテイキング行動については教育から約6か月後において教育前よりも抑制される傾向が見られた(研究2)。これら2つの研究結果より,エラー体験プログラムの有効性について議論された。(図2,表4)