労働科学
Online ISSN : 2187-2570
Print ISSN : 0022-443X
原著
労働者の疲労研究における生理的実体理論の批判的検討
斉藤 良夫
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2016 年 92 巻 1-2 号 p. 1-16

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抄録

人間の疲労に関する最初の研究方法論である生理的実体理論が、労働者の疲労研究に有効ではなかった理由を歴史的に明らかにした。この理論では、作業によって労働者の作業能力は必ず低下すること、そして疲労の原因は乳酸などの化学物質の蓄積やエネルギ―消費に基づくと仮定された。労働者の疲労研究は、彼らが職場で作業を行うときモチベーションや欲求などの心理的機能が作用して、彼らの作業パフォーマンスは必ずしも減少するとは限らないことを示してきた。また、その研究は、作業時間の短縮、休憩の挿入、物理的環境の改善、機械の設計の改良などの方策によって、彼らの疲労が軽減することを明らかにしてきた。20世紀前半の終わりには、労働者の疲労の原因は生理的実体理論によって説明できないことが明白になった。

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© 2016 公益財団法人 労働科学研究所
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