ボランティア学研究
Online ISSN : 2434-1851
Print ISSN : 1345-9511
大学の海外体験学習における当事者性の醸成
-東ティモール体験学習の事例から-
桑名 恵
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ジャーナル オープンアクセス

2019 年 19 巻 p. 23-34

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抄録

 海外体験学習では、異文化体験での混乱やジレンマから学びを深める気づきが得やすい。また、社会参加を体験することで、遠い国の出来事と自分との距離が近づき、当事者性を高める。一方、その効果は一時的なものにとどまる傾向にある。本稿では、継続的な学びや行動を促すにあたって、グローバルイシューの問題解決には欠かせない「自分ごと」を引き出す当事者性の醸成の重要性を、開発教育および、変容的学習のプロセスから考察した。当事者性の醸成には、知識の習得のみならず、価値観の変容にもいたるプロセスが必要である。変容をもたらす学習には省察から実践に移す行動の影響が大きいため、帰国後の主体的な学びと活動の場の創出に考慮したプログラム設計が必要とされる。具体的には、学生へのインタビューやアンケート調査から、共感的な人間関係に基づく学びのコミュニティづくりや、振り返りを通じた問題意識の深化などの環境づくりが重要であることを示した。変容的学習の土台に配慮することによって、参加者間の協働などの実践を通じて当事者性が高められ、さらに個人的な学びやキャリア選択、日常生活での新しい価値観に基づく行動に継続的な影響をもたらす可能性をもっている。

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2019 国際ボランティア学会
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