抄録
内モンゴルにおける植林活動を事例に、植林ボランティアの緑化思想を現地の人びとの認識と実践から相対化し、乾燥地における植林ボランティアの活動評価のあり方を考察する。相対化するにあたって現地の人びとに着目するのは、かれらがその風土のなかで培ってきたみずからの経験と価値観をもつからである。牧畜民と日本人の植林ボランティアの間には風土の違いにもとつく認識と経験の差がある。植林ボランティアはこの差を埋めることなく、みずからの緑化思想をそのまま乾燥地の中国内モンゴルにもちこんでいるといえる。そして、植林が「ボランティア」という形で実施されることによって、行為とその影響が無批判に是とされ、植林活動を評価する仕組みの欠如が許されている構造を指摘した。植林活動の評価には、事前に長期的な視点に立った自然環境と社会経済への影響を検討し、現地に暮らす人びとの視点からその必要性を検討することが肝要である。そのうえで、現地の人びとが培ってきた経験を活かす形で活動を立案することが求められる。ボランティア活動の事前評価の重要性は環境問題に限らず、開発援助、教育など、あらゆるボランティア活動においても通じるであろう。