抄録
近年,スマートフォンやタブレットなどの移動通信端末が急速に普及しており,電磁波が身近で利用される機会が増大している.そして,それらの端末から放射される電磁波による人体への影響が総務省をはじめ多数研究されている.通信端末で用いられる無線周波数帯では熱的作用が支配的であり,比吸収率(Specific Absorption Rate; SAR)を指標として評価がされている.特に,中継・番組制作現場などで用いられるトランシーバは,通信端末の中でも放射電力が大きく,人体深部への電磁波ばく露が懸念されるVHF (Very High Frequency)帯で用いられるため,端末使用時における人体への影響評価が必要である.本稿では,トランシーバを模擬したきょう体付きノーマルモードヘリカルアンテナ(Normal mode Helical Antenna; NHA)を数値モデル化し,FDTD (Finite Differential Time Domain)法により頭部正面使用時のSAR評価を行った.その結果,端末の配置により局所10g平均SARの差異が確認できた一方,国際非電離放射線防護委員会(International Commission on Non-Ionizing Radiation Protection; ICNIRP)の管理環境指針値を十分下回ることが確認できた.