岩手医科大学歯学雑誌
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研究
エナメル質齲蝕病巣のin vitro再石灰化におよぼすリン酸化オリゴ糖(POs)の効果
稲葉 大輔南 健太郎釜阪 寛米満 正美
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2002 年 27 巻 3 号 p. 197-202

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抄録

著者らは,馬鈴薯澱粉の加水分解物より調製されるリン酸化オリゴ糖(POs)がカルシウムの溶解を強く促進し,カルシウム-リン酸の沈殿形成を阻害することを報告した。本研究の目的はエナメル質の齲蝕様病巣の再石灰化におよぼすPOsの効果をin vitroで検討することである。ウシエナメル質試料を0.1M乳酸ゲル(pH5)で脱灰後,NaFとして2ppmFまたは様々な濃度のPOs(0.07-4%)を添加したミネラル溶液(20mM Hepes,1.5mM CaCl_2,0.9mM KH_2PO_4,pH7)に37℃で7日間,浸漬した。エナメル質のミネラル濃度分布はtransversal microradiographyにより定量化した。0.07-0.2%のPOsを含むミネラル溶液で処理した試料のミネラル喪失量(ΔZ,vol%・μm)は,脱灰エナメル質よりも有意に低く(p<0.001),しかも2ppmF群と統計学的に同等の値であった。POs群試料の再石灰化率はPOs濃度の対数値と有意な負の相関を示した(r=0.99,p<0.0001)。本研究の結果から,POsは新規かつユニークなエナメル質の再石灰化促進物質であり,栄養学的なアプローチにより齲蝕予防に活用しうる可能性が示唆された。

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2002 岩手医科大学歯学会
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