岩手医科大学歯学雑誌
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研究
エナメル質と象牙質の再石灰化におよぼすリン酸化オリゴ糖カルシウム塩の口腔内における効果
稲葉 大輔南 健太郎釜阪 寛米満 正美
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2002 年 27 巻 3 号 p. 203-209

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抄録

著者らはリン酸化オリゴ糖カルシウム塩(POs-Ca)が馬鈴薯澱粉の加水分解物より抽出でき,カルシウムの溶解性を高めることを先に報告した。本研究の目的は,POs-Ca配合シュガーレスガムのエナメル質および象牙質の再石灰化におよぼす効果を口腔内実験により確認することである。12名のボランティア(男性6名,女性6名;平均22歳)をランダムに2群に分け,二重盲検,クロスオーバーデザインの口腔内実験を行った。各被験者は脱灰した牛歯エナメル質および象牙質ディスクを取り付けた上顎口蓋プレートを装着し,キシリトールガムまたは2.6%POs-Ca配合キシリトールガムのいずれかを,1日4回噛んだ(期間:2週間/ガム)。実験期間中,フッ化物は使用せず,エナメル質ディスクが乾燥しないよう注意した。エナメル質ディスクのマイクロラジオグラフから脱灰深度ldを評価した。POs-Caガム群のエナメル質および象牙質のld値は,それぞれ70±11μmならびに71±13μm(Mean±SD)で,キシリトールガムの値(エナメル質:101±21μm,象牙質:95±13μm)よりも25-31%減少していた(p<0.001)。このミネラル蓄積のメカニズムは,POs-Caが唾液のCa/P比をハイドロキシアパタイトの比率(1.67)に向けて高め,歯質に対して過飽和なミネラル状態を維持させたことによると考えられた。本研究より,2.6%POs-Ca配合シュガーレスガムを毎日利用することは,エナメル質と象牙質,双方の再石灰化を強く促進し,齲蝕予防に有効であることが示唆された。

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2002 岩手医科大学歯学会
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