岩手医科大学歯学雑誌
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研究
小児プラークへの歯周病原性細菌の定着
木村 美澄
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2014 年 38 巻 3 号 p. 107-116

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抄録

'Red complex species' [Porphyromonas gingivalis (Pg), Treponema denticola (Td)およびTannerella forsythensis (Tf)], Aggregatibacter actinomycetemcomitans (Aa)はそれぞれ慢性歯周炎,侵襲性歯周炎の原因菌として挙げられているが,歯周疾患に罹患していない小児プラークからも検出されることが明らかにされている.本研究では,歯周病原性細菌の小児への感染とミュータンスレンサ球菌(MS)の感染との関連性,また,歯周病原性細菌の母子感染の可能性を検討する目的で, 327名の小児プラーク中の'red complex species', AaおよびMSの感染,および母親のプラークへの感染との関連性ついて検討した.インフォームドコンセントの得られた小児とその母親よりプラークを採取, DNAの精製を行った.菌種の同定は菌種特異的PCRにより行った.その結果,小児のプラークへのMSの感染はdmf/DMF歯率と正の相関を示した.歯周病原性細菌では, Aaが母子両群とも最も高い検出率を示し,次にTfの検出率が高かった.これらの検出率は増齢に伴い上昇した. Pgは小児群の13.1%,母親群の23.0%で検出されたが, Tdは小児群では検出されず,母親群でも検出率は低かった(7/239).小児群におけるMS感染と歯周病原性細菌感染との間には関連性が認められなかった.母子ペアで検出の一致度を検討した結果, Tf陽性の小児93人のうち50人の母親で, Pg陽性の小児43人のうち17人の母親でこれらの菌が検出された.以上より, Aa, TfおよびPgといった歯周病原性細菌は小児プラークに感染し得ること,これら歯周病原性細菌の感染はMSの感染状況とは関連性の無いことが強く示唆された.また,歯周病原性細菌,特に'red complex species'は,垂直(母子)感染が起こる可能性は低いことが示唆された.

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2014 岩手医科大学歯学会
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