岩手医科大学歯学雑誌
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症例
全身麻酔導入時に発症したロクロニウムによるアナフィラキシーショックの1例
四戸 豊三浦 仁坂本 望佐藤 雅仁羽田 朋弘古城 慎太郎八木 正篤水城 春美城 茂治
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2014 年 39 巻 1 号 p. 29-36

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抄録

顎変形症の診断にて下顎枝矢状分割術が予定された症例に対して, 全身麻酔の麻酔導入時にアナフィラキシーショックを経験したので, 若干の考察を加えて報告する. 症例:42歳女性, 身長156cm, 体重48Kg. 顎変形症の診断にて, 下顎枝矢状分割術が予定された. 既往歴として, 38歳から無症候性原発性胆汁性肝硬変にて本学消化器肝臓内科にて通院加療中である他, 特記事項なかった. 経過:全身麻酔は, フェンタニルクエン酸塩50μg, プロポフォール100mg, ロクロニウム臭化物40mgを静脈内投与, レミフェンタニル塩酸塩を0.1γで持続注入開始し急速導入され,空気・酸素・セボフルランで麻酔維持された. 気管挿管約10分後に頸部および体幹に膨疹を認め, 血圧低下 (56/30mmHg) を伴うアナフラキシーショックを発症した.ガイドラインに基づき, アドレナリン0.3mg筋肉内注射,ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム500mgとクロルフェニラミンマレイン酸塩5mgを静脈内投与し, 2つの末梢静脈路から輸液負荷による処置がなされた. 幸い状態が重篤化することなく回復した. 後の皮膚テストで,ロクロニウムがアナフィラキシーの原因薬の一つであるとされた.
アナフィラキシーは全身性のアレルギー反応である. そのため,発症後の急性期の治療ばかりでなく, アナフィラキシーショックの診断を確定し, その原因薬物を同定することは重要である. そして, 発症時には症状が重篤に進行しないように院内マニュアルに沿って迅速に対応しなければならない.さらに, 医師, 看護師との連携も図り, 協力体制を整えておかなければならない.

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2014 岩手医科大学歯学会
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