岩手医科大学歯学雑誌
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原著
口腔扁平苔癬罹患粘膜組織に含まれる微量元素のPIXE 分析
飯島 伸石橋 修原 康文世良 耕一郎武田 泰典杉山 芳樹
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2017 年 42 巻 1 号 p. 33-44

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抄録

口腔扁平苔癬は口腔外科臨床で遭遇する機会が多い粘膜疾患である。疾患の治療には原因を除去することが重要である。しかし、口腔扁平苔癬は原因が明確でないため、治療が難渋することがある。 われわれは、これまでに挙げられている口腔扁平苔癬の病因説のうち、関与が有力とされている金属アレルギーに注目した。アレルギーの発症には、生体が直接的に抗原としての金属を取り込む過程が必要である。そこで、口腔扁平苔癬に罹患した粘膜組織の含有元素をPIXE 法を用いて分析した。そしてこの結果を、これまでにわれわれが報告した健常者口腔粘膜組織の分析結果と比較検討を行い、口腔扁平苔癬の原因金属を特定することを目的とした。

対象は口腔扁平苔癬に罹患した44 名で男性16 名、女性28 名で平均年齢は62.9 歳であった。対照は健常者口腔粘膜組織の100 名で男性48 名、女性52 名で平均年齢は31.6 歳であった。

その結果、病変部粘膜から検出された微量元素は、必須元素であるSi, Cu, V, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Zn, Se, Mo, Sn の12 種類で、超微量元素はGe, As, Br, Rb, Pd の5 種類であった。また、汚染元素はAl, Ti, Ga, Sr, Zr, Nb, Ag, Sb, Au, Hg, Pb, Y の12 種類が検出された。これは、健常者群の粘膜組織から検出されたものと同様であった。 検出率、含有量の比較検討では、本来生体には存在しないはずの汚染元素が、OLP 群の粘膜組織は健常者群の粘膜組織に比べて検出率は低いが含有量では多い傾向を示した。

同一個体から採取した血清、粘膜組織、唾液から検出された元素の種類は三者とも同じであった。 汚染元素が粘膜組織に蓄積し、粘膜上皮の脱落とともに排泄されている可能性も考えられた。

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2017 岩手医科大学歯学会
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