2018 年 43 巻 1 号 p. 24-35
2002 年に発表されたMcGill consensus では「下顎無歯顎症例の補綴治療における第一選択肢は2本のインプラント体で支持するインプラントオーバーデンチャー(2-IOD)である」と提言している.それから現在に至るまで,2-IOD におけるインプラント体の生存率やインプラント体にかかる応力解析などに関する研究が進められてきた.しかし,2-IOD の義歯床形態,人工歯の数,咬合様式,アタッチメントの選択など補綴装置の設計指針は確立されていない.本研究では,2-IOD に設置されるロケーターアタッチメントに着目し,維持力の違いが顎堤粘膜に及ぼす影響を明らかにすることを目的として,無歯顎模型による実験を行ったので報告する.
下顎無歯顎模型の両側犬歯相当部に,2本のインプラント体(Φ3.75 mm × 11.5 mm ,Bränemark System® Mk Ⅲ Groovy RP,Nobel Biocare, Kloten, Switzerland)を埋入後,2-IOD を製作した.圧力測定のために,小型圧力センサを6ヵ所(両側小臼歯部頬側,両側頬棚部,両側大臼歯部舌側)に設置した.荷重は,全部床義歯(CD)装着者の咀嚼力を参考に50 N とした.測定は,維持力の異なる3種類のリテンションディスク(0.7 kg,1.4 kg,2.3 kg)を用いて行った.対照として実験用CD を製作し,同様の実験を行った.
両側荷重条件において,全ての測定部位で2-IOD のほうがCD よりも粘膜負担圧が軽減された.片側荷重条件においても,義歯の支持に関与する小臼歯部頬側と頬棚部において,2-IOD のほうがCD よりも粘膜負担圧が軽減された.
本研究から,CD と2-IOD にかかる咬合力が同じ場合は,ロケーターアタッチメントが顎堤粘膜への負担を軽減させることが明らかとなった.