岩手医科大学歯学雑誌
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原著
2型糖尿病のリスクファクターとしての歯周病原細菌DPP4
中里 茉那美下山 佑根本 優子佐々木 大輔根本 孝幸佐々木 実八重柏 隆
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2018 年 43 巻 1 号 p. 48-60

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抄録

歯周炎は2型糖尿病のリスクファクターとなることが示唆されているものの,その分子機構についてはいまだ明らかにはされていない.インクレチン [GLP-1(glucagon-like peptide-1)および GIP(gastric inhibitory polypeptide/glucose dependent insulinotropic polypeptide)]は食物摂取後のインスリン分泌を促進する生理活性ペプチドであるが,その後速やかにジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)によりN 末端から2番目のアラニンと3番目のグルタミン酸の間が切断され,不活性型となる.最近の研究から,ヒトの慢性歯周炎の主要原因細菌であるPorphyromonas gingivalis がDPP4 を保有していることが明らかにされている.原核細胞である細菌のDPP4 は真核細胞であるヒトのDPP4 と相同性を持つことから,歯周病原細菌の感染は,その保有するDPP4 のインクレチン切断作用を介して2型糖尿病の病態形成/進行につながる可能性が推察される.

そこで本研究では,歯周病原細菌の菌体結合型DPP4 の発現とそのGLP-1 切断能について検討した.その結果,今回調べた6菌種の歯周病原細菌のうち,P. gingivalis,Tannerella forsythia およびPrevotella intermedia が菌体結合型DPP4 を発現しており,それらはGLP-1 切断・不活性化能を示すことが明らかとなった.また,リコンビナント体を用いたT. forsythia DPP4(TfDPP4)の検討から,TfDPP4 はP. gingivalis DPP4(PgDPP4)と相同性が高く,分子量,等電点,至適pH,塩濃度依存性といった分子プロフィールが類似することが明らかとなった. 以上の結果から,P. gingivalis を含む複数の歯周病原細菌が菌体結合型のDPP4 を発現しており,そのDPP4 は,ヒトのDPP4 同様,インクレチンの切断・不活化に機能し得ることが明らかとなった.それゆえ,歯周病原細菌感染である歯周炎は2型糖尿病の重要なリスクファクターとなることが示唆された.

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2018 岩手医科大学歯学会
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