岩手医科大学歯学雑誌
Online ISSN : 2424-1822
Print ISSN : 0385-1311
ISSN-L : 0385-1311
研究
SCRG1 はマクロファージ様細胞Raw264.7 におけるCCR7 の発現を増強することでCCL19 への走化性を誘導する
相原 恵子
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 45 巻 1 号 p. 35-45

詳細
抄録

間葉系幹細胞(MSC)は様々な免疫担当細胞の機能を制御することが報告されている.本研究ではマクロファージにおけるMSC 由来サイトカイン様ペプチドscrapie responsive gene 1(SCRG1)のパラクリン作用を解明した.マウスマクロファージ様細胞Raw264.7 をSCRG1 による刺激ならびに骨髄由来MSC であるSG2 との共培養で発現上昇する遺伝子として,C-C chemokine receptor type 7(CCR7)を同定した.SCRG1 で刺激されたRaw264.7 はCCR7 の有意な発現増強を認めた.CCR7 はCC chemokine ligand(CCL) 19 やCCL21 の受容体として,T 細胞や樹状細胞のリンパ組織へのリクルートに必須な因子として知られている.Raw264.7 をSCRG1 で前処理してtrans-well migration assay でCCL19 とCCL21 に対する走化性を検証した.未処理のRaw264.7 はCCL19 やCCL21 に対して走化性を示さなかったが,SCRG1 で前処理したRaw264.7 はCCL19 に対する走化性が有意に促進された.しかしながら,CCL21 に対する走化性は促進されなかった.以上の結果から,SCRG1 によってCCR7 の発現が増強されたマクロファージは,CCL19 に対する走化性を特異的に獲得することが示された.炎症部位に集積したMSC から分泌されたSCRG1 は,マクロファージにパラクリンに作用することでCCL19 への走化性を獲得するとともに,マクロファージが炎症部位から退出するメカニズムに関与する可能性が示唆された.MSC 由来のSCRG1 によるマクロファージの走化性獲得の発見は意義が高く,今後はMSC の性質や能力を利用した細胞治療への応用が期待される.

著者関連情報
2020 岩手医科大学歯学会
前の記事 次の記事
feedback
Top