2021 年 46 巻 2 号 p. 91-96
静止性骨空洞は,下顎角部から大臼歯部に認められる舌側皮質骨の骨欠損で,1942 年にStafne によって報告された.今回われわれは,下顎骨の前方部に認められた静止性骨空洞の1 例を経験したので報告する.患者は39 歳の男性で右側下顎骨X 線透過像の精査目的に当科を紹介され受診した.口腔内所見では,下顎前歯部舌側に陥凹を認めたが,同部の粘膜は健常色であった.に動揺や打診痛は認められず,すべて電気歯髄診で陽性反応を示した.パノラマX 線写真では 根尖を含む境界明瞭な類円形の透過像を認め,CT 所見では同部の舌側に骨の陥凹を認めた.以上の所見から静止性骨空洞と診断し,経過観察を行っている.静止性骨空洞は,まれに下顎骨前方部に生じることがあり,この場合は歯原性囊胞や腫瘍性病変との鑑別が必要となる.自験例では骨の陥凹部を直視できたが,静止性骨空洞を他の疾患と鑑別するためにはCT 検査が有用であると考えられた.